3大祭りにしては影薄い?「シャブオット」

3大祭りにしては影薄い?「シャブオット」

「シャブオット」って何のお祭り?

近代は、乳製品を食べてお祝いする風習のあるイスラエル。

「チーズケーキを食べる日」と、なんだかぼんやりイメージしている人も多いのですが、ユダヤの歴史上、実はかなり重要なお祭りです。

ただ、あまりにも広大無辺で、説明するには一部分を切り取るしかなく、捉え難いのです。

この祭りは代々受け継がれながら世代を越えて祝われている祭り。

イスラエルがイスラエルであることの根幹に触れる祭りという感じがします。

いくつかシャブオットのイメージを並べてみます。

・「7週の祭り」とか「五巡節」ともいう

・三大祭りの一つ

・乳製品を食べる祭り(チーズケーキ万歳)

・ルツ記を読む(何それ。)

・徹夜で聖書の勉強をする祭り(突然の嫌な予感)

・イスラエルの核「トーラー(神の教え)」をシナイ山で授与された日とされる

・小麦の収穫祭

・女の子たちが花冠つけていて可愛い

・白い服をきる

乳製品に埋もれるシャブオット。

大好きなチーズとワインを頬張りながら、何で現代では「乳製品の祭り」になっているの?という質問に、いろいろな答えが返って来ました。中でも気に入ったのが

「トーラーを神様に貰った当日、食事をしながら祝いたいのだけれど、肉に関する食物規定があり過ぎてめんどくさい。とりあえず今日は乳製品で祝おう。」というもの。笑

とんちの効いたユダヤジョークが大好きです。

チーズ!ミルク!クリーム!乳製品の祭りかと勘違いしそうなシャブオットの食卓。季節のフルーツも溢れんばかりに並び、それに合わせてイスラエルのフルーティな白ワインがおすすめです。

また、イスラエルで本を買うならこの季節。

空き地に突然現れる巨大な青空BOOKマーケットなど、ここぞとばかりに値下げしたお買い得な本が山積み!ヘブライ語が読めなくても、子供用の絵本や美しい写真集などを楽しめます。

果たしてなんでこの時期に本のフェスティバルをするのか??後半へ続きます…

7週の祭りとか五巡節(ごじゅんせつ)ともいう

それは日本語ですか?という感じですが、

エジプトの地から救われた「過ぎ越しの祭り」(ペサハ)から数えて7週目(50日目)に祝うための異名ですね。(数え方がちょっとややこしいのでだいたいで・・・)

他にもギリシャ語の「50」にちなんだ「ペンテコステ」や、ヘブライ語では「ハグ ビクリーム」とか「ハカツィールの祭」などとも呼ぶらしいです。

名前ありすぎるせいでぼやけるから統一してほしい。と思ってしまいますが、奥深さの所以。仕方がない。笑

過越しの祭り(ペサハ)と仮庵の祭り(スコット)と共にイスラエル三大祭りの一つ

それはもう盛大に祝うんだと思っていたんですが、

住んでみた私の印象では「乳製品を家で食べまくる日」とゆう印象。

何の日なんだ?と3年くらい疑問でした。

チーズは大好きなのでイスラエルのチーズ!チーズ!チーズ!には大興奮で、あまり深く考えていなかっただけかも・・・(イスラエルのチーズ美味しいですよ!)

徹夜で聖書の勉強をする祭り

そう。たっぷりのチーズとワインをいただいて、ぐっすり眠りこけている深夜にこそ、祭りが行われていたのです。

気がつかなかった!!!←(食いしん坊)

ユダヤ教ではトーラーの巻物(聖書・教えの巻物)を神がユダヤ人に与えた日だとされるので、各シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)で夜通し聖書勉強会が行われており、皆シナゴーグのハシゴをして、色々なラビ(教えの指導者)の話を聞いたり、議論をしたり、西壁で学んだりしているんです。

古代の昔から世代を越えて聖書研究をし続けている民!このすごさわかりますか?数千年と言う時間を使ってなお達することのできない深淵さが聖書の魅力。

「徹夜で勉強をする日」と言うと、日本ではテストのためってイメージがあるかもしれませんが、彼らにとってこれこそが「命」なのです。

誰でも参加可能だそうなので、男性はキッパを被って、女性は露出を避けて深夜のシナゴーグへ行ってみては?

イスラエルの「勉強」は日本と違うので驚くかも。

冒頭の本屋が増える謎は、このトーラーを愛し、学びを愛する祭りとしての姿かもしれません。

小麦の収穫祭

シャブオットはイスラエルの畑が黄金に色づく季節でもあります。

北部の麦畑は圧巻。昔はこの収穫の喜びを神に感謝し、エルサレムの聖なる神殿に、小麦、大麦、ブドウ、イチジク、ザクロ、オリーブ、ナツメヤシの7種の供え物を持っていくのがシャブオットでした。

聖書の中にある美しいストーリー「ルツ記」はこの収穫の季節の物語です。

ルツと言う外国人女性が、イスラエルの麦畑で落穂拾いをしているときに、ユダヤ人ボアズと出会い結ばれる物語。

悲劇で始まるのですが、深い絶望と困窮の中、外国人ルツの見返りを求めない勇気と愛と誠実で勇猛果敢な行いが描かれ、力強く生きる女性が主人公という古代では珍しい短編。

回復と、愛がテーマで、最後にはダビデ王の祖母となる逆転のストーリーでもあります。

シャブオットにはこのルツの生涯から学ぶのだとか。

ユダヤ人が外国人ルツから聖書の生き方を学んでいるとも言えるので面白い現象でしょう?

最後に・・・

私たち外国人も、ちょっと聖書の世界を学んでみたいかも。世界が広がるかもしれません。

イスラエルの「お祭り」には喜び、や楽しみが溢れていますが、私たちの考える「飲めや歌えや」のお祭りの騒ぎとは何だか違うものを感じます。

勉強したり、学ぶことを祭りとしてこんなに楽しんでいるなんて・・・!!!!

ホロコースト記念日、戦没者記念日、独立記念日と、イスラエルに降りかかった厄災と、失われた命を、覚え、記憶する「祭り」の1週間。記憶と追悼の週。

イスラエルでは、「記憶」が国を一つにしていく力であり、子供たちが未来を生きていく力である、と捉えています。ですから、「祭り」を「記憶の継承」と訳した方がいいかもしれません。

亡くなった一つ一つの命とその記憶(記録・歴史)を、国の宝として継承します。

決して被害者意識を植え付けるためではなく、歴史の事実をそのまま記録し伝えるため研究し続け、「記録」と「記憶」が未来を建てあげる力となるよう育てることを大切にしています。

過去の痛みを忘れてしまうのでもなく、だからといって恨むのでもなく、良い未来に進んでいくための土台として残す。

とても難しいことなのですが、そうあろうとする姿勢が垣間見える週です。

イスラエルの心を肌で感じる期間が、毎年4-5月にやってくる3つの記念日。

・ホロコースト追悼日[ヨム・ハショア](4-5月 独立記念日の8日前)

・戦没者記念日(4-5月 独立記念日の前日)

・独立記念日(4-5月)

深いテーマではありますが、今回はこの3つの記念日についてなるべく簡単に紹介します。

ホロコースト追悼日(ヨム ハ ショア)

写真はエルサレム旧市街、シオンの丘にある「ホロコーストミュージアム」

この日は、ナチスドイツのユダヤ人絶滅計画のために亡くなった600万人の同胞・家族たちを覚えます。

毎年公式の祭典が行われる他、失われていく生存者の声を残そうと様々な取り組みが行われています。中でもホロコーストの研究機関であるヤドバシェムでは、亡くなった一人一人を洗い出す途方のない作業が今もなお続けられています。

命に焦点を当てるイスラエルの姿勢は、被害者としてではなく、1人の人として、彼らがどう生き、またどう死んだのか、その記録を残し、記憶すること。

それを知った今の私たちはどう生きるのか、子供たちをどう生かすのかを問います。また個人でも、記憶するという意識は高く、各家庭、親族、学校でもさまざまな形でこの週にイスラエルの命のあゆみに触れます。

近年広がりつつあるのは、「zikaron ba salon」(記憶のリビング)と言うオープンハウス。

ホロコーストサバイバーのいるお家や、その子供たちの家に集まり実体験を聞く、という取り組み。(ヘブライ語がメイン)

独立記念日の8日前に当たる日で、全国で定刻に黙祷が行われ、レストランやカフェも閉まります。

この日から7日間は娯楽施設は休館し、ラジオからは陽気な音楽は流れず、国中が喪に服します。

戦没者記念日(ヨム  ハ ズィカロン)

この場所は現代イスラエル建国の父、「テオドール・ヘルツェル」の眠る丘で、ホロコーストミュージアム(ヤドバシェム)の隣に位置し、建国への思いが詰まった緑豊かな美しい森です。

ホロコースト追悼日から7日目、戦没者記念日がもたれます。

この日は、イスラエル建国当初から国のために亡くなった家族や友人を覚える日。

イスラエルでは、戦争で亡くなった人はその地位に関わらず、「へルツェルの丘」へ埋葬されます。

命の重さがみな等しく平等であることを感じる丘です。

記憶と追悼の週は、娯楽施設の他、レストランやカフェも閉まり、ホテルではお酒の提供をやめます。

私の隣人のおじいさんで仲良しのYおじさんが、この週にヘルツェルの丘へ連れて行ってくれました。

自然の森の中に緑と花が丁寧に手入れされ、穏やかで爽やかな風の吹く、気持ちの良い場所です。

そこに整然と並んでいるエルサレムストーンと植木。イスラエル人のお墓です。

一つ一つに、故人の好きなものや花や木が溢れ、賑やかでカラフルで、イスラエル人だな〜と微笑ましくなります。

※イスラエルでは、お墓の上に「石」を置く習慣があります。花は枯れてしまうけれど、石はいつまでも残るから。あなたのことを、私も、そして私の子孫にも忘れさせない。そんな記憶の習慣です。

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Yおじさんは、31才の息子、エマヌエルを亡くしました。

空軍の優秀なパイロットでした。

訓練中、一緒に乗っていたパートナーのパイロットが気絶。最期の瞬間まで諦めず、仲間に声をかけ続けた…そんな勇敢な姿が記録されていたこと、軍からの連絡を受けた時の気持ち、駆けつけた時の様子・・・

椅子を並べて座り、彼の最期の姿、その時の家族の思いを語り聞きます。

見るとあちこちに椅子があり、ああ、それぞれのストーリーをここでゆっくり語り、記憶しているのだなぁ…とわかります。

Yおじさんは、「戦闘中ではなく、事故で亡くなった息子もここに埋葬してくれた。息子も国の誇りとして扱ってくれた」と、イスラエル軍の態度に誇りを持っていました。

「イスラエル軍の基地へ行けば、今でも息子を覚えていて、私に声をかけてくれるんだ。」と誇らしげに、そして「イスラエルは、たった一つの命も小さいものとして扱わない。」そう語ってくれました。

子どもたちを軍に送り出す気持ちはどんなものなのでしょう。

イスラエルが今このように存在し続けているのは、イスラエル軍が戦ってきたから、守っているからであることは間違いないのです。

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ふと気が付くと、並ぶお墓に刻まれた年齢は19才…21才…25才…19才…写真が飾られているお墓には、彼らの笑顔が輝いています。

エジプトで奴隷であった古代も、国を失って全世界に散り、迫害された時代も、建国から今現在に至るまで、命とその記憶を絶やさず繋いで継承してきた延長線上にイスラエルはあります。

ヘルツェルの丘は未来を繋いでいく場所です。

国中に響き渡るサイレン

photo by:https://images.app.goo.gl

ホロコースト追悼日と戦没者記念日には、朝とお昼の2度、国中にサイレンが鳴り響きます。

この時、車に乗っている人もバスに乗っている人も外に出て、街中の人がその場に立って頭を垂れ、または敬礼し、黙祷を行います。

photo by:https://images.app.goo.gl/atAqcazhietAgjtK8

その景色を初めて見た時に感じた感動は魂に焼き付いています。

サイレンがなる直前まで何も変わらないイスラエルの賑やかな日常。その全てを止め、町中にサイレンの音だけが響き渡る瞬間、この国の「バラバラなのに一つ」という奇跡を目の当たりにします。

イスラエルが大切にする「記憶」は、敵への恨みや憎しみではなく、いつも命への姿勢です。

難しい問題を山のように抱えていますし、綺麗事ばかりではありません。

しかし命を最優先する心がそのベースにあることは確かで、こんな姿を見るたびに、イスラエルに惚れてしまいます。

独立記念日(ヨム ハツマウート)

喪に服していた戦没者記念日の夜。一週間の喪が明けます。

その夜です。さっきまで喪に服していたはず。(※イスラエルのお祭りは、全て夜から始まります。)

どこからともなく漂ってくる炭火焼の肉のいい香りと、ワインを飲んだり賑やかな声、陽気な音楽が聞こえてきます。

「独立記念日」です。

初めて体験した時は、全く心がついていかず、大いにビビりました。切り替えの速さ!!!!!エルサレムの至る所でライブが始まり、歌い踊る群衆。

この切り替えの速さも、イスラエルの強さの秘訣。いつまでもだらだら引きずらない。

悲しむ時に悲しみ、喜ぶときに喜ぶ。「時」がある。このメリハリが、負の感情や不安に負けない、希望を持ち続けるイスラエルのあり方です。

次の日のお昼にもなると、街中の芝生という芝生の木陰にBBQセットが並び、国中が肉の焼ける香ばしい煙に包まれます!どこに行っても炭火焼きの匂い!!

この光景は圧巻。(いつその大量の肉を買っていたんだ。)

イスラエルの祝いは、やはり古代から肉の焼ける匂いと共に・・・

イスラエルの命に対する考え方、「記憶」と「喜び」こそ、この国の力。

悲しみにとらわれず、与えられている命を喜び、楽しみ、満喫する生き方。

失われたもの、痛みを決して忘れないし、誰よりも記憶して語り継ぐけれど、そこで生きる喜びを絶対失いません。

いや、むしろ更に喜びを増し加えて、悲劇に勝利しているように感じます。

独立記念日にはイスラエル軍が飛行ショーを行い、国民がフィーバー!

BBQの群れが国中の芝生を埋め尽くし、身体中に煙の匂いをまとった人々の笑い声が響きます。

生きる喜び。悲劇や理不尽との付き合い方。命と希望。イスラエルの魂に触れる週。少しはお裾分けできたでしょうか。

ユダヤ教3大祭り「ペサハ」なんて初耳!のあなたも、あの有名なレオナルド・ダビンチの名画「最後の晩餐」は見たことありますよね?

これがまさにペサハの晩餐の瞬間を描いたものなんです。(ただし、食卓スタイルは西洋風アレンジ)

ユダヤ民族が古代エジプトでの奴隷生活から解放され、モーセの導きによって出エジプトしたことを記念して、3300年程前からキリストの時代はもちろん、現代に到るまで祝われているのです!

2022年のぺサハはコロナ規制もほぼ無くなり、街に活気が復活!(マスクなしでOK。ワクチンを打っていなくても入れます。)イスラエルの政界では、「ぺサハのパン」が問題になり、議員が一人離脱・・・政権崩壊か?!また選挙か?!という騒ぎまで・・・国を動かすほどの問題か?!と思えるかもしれませんが、私たちが考えている重みとは違うようです。

問題となった『ぺサハのパン』はこの祭りの主食「マッツァ」という特別なパン(というよりクラッカー)。 祭りの1週間はイースト入りのふわふわのパンは禁止されているのですが、前日にパンを燃やすほど徹底しています。

photo by:https://images.app.goo.gl/RVzLUUJqE68FkvV66

これは、イスラエル人が古代エジプトから脱出するときのお弁当用に、パンを発酵させて膨らませる時間がなかったことに由来します。

記憶と追体験を通して子供たちに教え伝えるため、イースト無し、発酵無しのカサカサマッツァを食べるのですが、5000年という規模で守られ続けているからすごい。

イベント

photo by:https://images.app.goo.gl/AvvVRjCje8aKPpDX6

人混みを恐れないのなら、ペサハの西壁で、祭司の祝福「ビルカット・コハニーム」を受けてみてはどうでしょう?

少なくとも一度は参加する価値があります。

イスラエルではコロナ規制もほぼ無い状態なので、今年は活気が戻ってきそう。

この「祝福の祈り」は、毎週シャバットに各シナゴーグや家庭でも行われるのですが、年に2度、ペサハとスコットの祭りに毎年何万人もの人々が西壁に集まり、祭司の家系のユダヤ人たち(何百人も!)から歴史的な祝福を受けます。

両手を上げ、群衆の声が一つになる様子は特別な体験…!

3行の詩のような短い祈りですが、イスラエルで最も古いヘブライ文字として出土したのもこの祈りで、古代の昔から特別で力のある祈りです。

ただし!!

広場に確実に入るためにはか・な・り早めの行動を!

この日に旧市街の近くまで車で行くことはほぼ不可能ですので、覚悟して行きましょう。

私は何度かチャレンジして未だにたどり着けていません!(単に出発が遅い)笑

日時と時間は「THE PRIESTLY BLESSING (BIRKAT KOHANIM)+西暦」で検索。

2022年はこちら(※サマータイムで日本との時差は6時間)

ちなみに!西壁にはライブビューイングもあるので、日本にいてもちょこっと味わえるかも???https://www.skylinewebcams.com/en/webcam/israel/jerusalem-district/jerusalem/western-wall.html

ペサハのグルメ

パンと小麦(正確にゆうと小麦、大麦、オーツ麦、スペルト、ライ麦を含み、発酵する物)が街から消えるペサハの期間ですが、知恵を尽くしたペサハグルメが登場するのもこの時期。

小麦を使わないパンだと、とうもろこしやタピオカ粉を使ったパン(反則感あるが。笑)は温めるとモッチモチで日本人好み!私のお勧めはベーグル。

ファラフェルサンドも、小麦じゃないほうが美味しいのでは…とさえ思います。

※温めないとパサパサです。

クラッカーのようなマッツァをどう美味しく食べるか…。現代ペサハの永遠のテーマかもしれません。

こちらはユダヤのお母さんが作ってくれたマッツァボール入りスープ。

photo by:https://images.app.goo.gl/ZpMD28KFart9PtYD7

めちゃくちゃ美味しくてびっくり!パサパサのマッツァから溢れだすスープ!

photo by:https://images.app.goo.gl/A53vwHfGWrvsQPz27

他にもローストしたマシュマロやチーズをサンドしたり、ピザやラザニアに見立てたり、マッツァを駆使した手料理はもはやマジックです。

奴隷時代のレンガ作りを思い起こすために作られるデーツベースのフルーツペースト、「ハロセット」。

こちらも各家庭こだわりの代物で、同じのを食べたことがありませんが、どれも絶対美味しい!!

コレを作るためにデーツペーストは絶対買う私。

ペサハの小麦なしおやつには、ココナツクッキーや「マカルーン」というタヒーナのアーモンドプードルのクッキーなどがあります。これがコーヒーのお供に最高!

ココナツ好きな私は年中あってもいいのにと思う。

デーツとナッツをココアで丸めたロースイーツ、「デーツボール」

この時期はネットでもペサハレシピ!と銘打って美味しいレシピの数々がシェアされています。ペサハにかける情熱と工夫がすごい。

ショッピング

イスラエルで売られている商品には、『ペサハ』に食べられるかどうかのマークがついています。

この期間マークがついていない物は布が掛けられて買えないお店も!

イースト菌と酵母入りの食品は全て食べないので、パンもパスタもスーパーには置いてありません。

なぜ?と思うものについてはペサハの許可マークがない為。

日程

3-4月頃の7日間祝われるペサハ(2022年は4月15日の日没〜22日の日没まで)は、初日と最終日の日没からシャバットと同じように街がストップ!公共交通機関も止まるので要注意です。

そしてもちろんその7日のうちに実際のシャバット(金曜〜)もあるのでややこしい!

特に気をつけたいのが、国立公園などの観光施設も祝日の前日は半日営業だったりとイレギュラーな動きをするので、予定を立てる時には注意です。

もちろんイスラエルの友人にペサハディナーに誘われたらラッキー!

お腹をペコペコに空かせて行くことをお勧めします。(ただしペサハの儀式が長いので、お腹空きすぎは修行。)

宿泊

長期の休みを利用して、海外・国内旅行も多くなる時期なので、航空券や宿泊先はいっぱい!予約は早めにとったほうが◎

ホテルはこぞってペサハのプログラムを用意していたりもします。

車を借りておいて、死海や大自然でのBBQやキャンプ、ハイキングなどを楽しんだりもしていますよ。

せっかくですから、この時期だけのペサハの雰囲気を味わって!

「ペサハ」(過越しの祭り)

photo by:https://www.srugim.co.il/433440-רבנים-מתירים-להשתמש-בזום-בליל-הסדר

3-4月頃の7日間祝われる「ペサハ」では、街中のパンや小麦製品が消え、パッサパサの大判クラッカー「マッツァ」を主食に過ごします。

ペサハの前日までに家中を大掃除して、徹底的に小麦を家から出し、親の仇のごとく残ったパンを道端で焼いて燃やす光景も…

photo by:https://images.app.goo.gl/N9qNkC6Eannn2pmf8

なんでそこまで?!の、ペサハ(過ぎ越し)の物語を紹介します。

ペサハの物語

この話は、ユダヤ人のアイデンティティの根幹を成すもので、これを知らずには始められません。

他のお祭り(シムハットトーラーやスコット)も関係してくるので、知らない人は要チェック!

もしかしたら「モーセの十戒」の映画を見た人もいるかもしれません。

430年の間エジプトの奴隷だったイスラエルの民を救うため、神が選んだのがモーセさん。紅海を割って海を渡り、神の民として自由になったという「エジプト脱出」のストーリーです。

ちょっと突然のファンタジー?!ですが、イスラエルの神とユダヤ民族の関係って、日本の神信仰とは大きく異なっていて文化的にも非常に興味深いです。

映画「十戒」https://www.wikiwand.com/ja/十戒_(映画)

13世紀頃、エジプトの地ではユダヤ人たちが奴隷として苦役に苦しんでいました。

多産で多くなりすぎ、増え広がるユダヤの民を恐れたファラオは、生まれてきたユダヤ人の男子は全て殺すようにと命じます。(こわっ)

その頃に奴隷の子として生まれたのがユダヤ人モーセ。

しかし、母親はモーセを殺すことができず、(そりゃそうだ。)籠に入れてナイル川に流します。

それを拾ったのが、なんとファラオの妃!モーセはエジプトの宮殿でスクスク育ちます。

ファラオ https://www.wikiwand.com/ja/十戒_(映画)

一方、イスラエルの民への当たりが益々激しくなるファラオ。

奴隷たちの嘆きを聞いたイスラエルの神は、モーセの前に現れると、民をエジプトから救い出すようにと命じます。

モーセはファラオにユダヤ人を解放するようにと要求しますが、聞くわけないですねぇ。笑

そこで、イスラエルの神はエジプトに10の災いを起こし、徹底的にビビらせます。

エジプト VS イスラエルの神です。

ファラオは災いの9つまではビビりながらも、「奴隷解放なんてありえん!」と突っぱねますが、10番目の災いは…残酷なものでした。

「国中の長男が死ぬ。」これが10番目。

神が命じた”救いの条件”をその通り行ったユダヤの民の家は、10番目の災い(長男の死)を「過ぎ越す」ことができた・・・。これが過ぎ越しの祭りの起源です。

国中の長男が死んだ晩、エジプト全土で死者のいない家はなかったと記されています。ファラオの長男も然り…。

あまりのことにファラオの心は折れ、モーセとユダヤの民にその夜のうちにエジプトから出て行ってくれと言い渡します。

この時、ユダヤの民は追い出されるようにしてエジプトを出たので、旅に必要なパンを発酵させている暇がなく、種無しパン(マッツァ)と呼ばれる薄いパンを焼いて持って行きました。

日本人なら米を炊いてる暇がなくて、せんべい持ってきた感じでしょうか。(なんか違うけど・・・いいか)笑

ところが、我に返ったファラオは逃げたユダヤ人を戦車を率いて追いかけます。

逃げたユダヤの民の数は女と幼児を除いて60万人!!!!!!!

60万の労働力を手放すってかなりのことですもんねぇ…ピラミッドが建たない。笑

(というか、なんで憎き奴隷ごときの為に大打撃受けねばならんのじゃ!自由にしてなるものか!って感じでしょうか。)

怒りで狂ったエジプト軍がものすごい勢いで迫ってくる中、前に広がる海!絶体絶命!

その時、海の水が割れ、海底の地面が現れ、イスラエルの民は「歩いて」紅海を渡り、逃げ切ったのです。

奇跡のスケールでかすぎ。。。。

ファラオは怖じけずそのまま紅海を渡ろうとしますが、海の水は勢いよく元に戻り、エジプト軍は沈んでしまった…と。

現在紅海のとあるポイントにはエジプトの戦車が沈んでいる跡!?と言われるものもあるとか?ないとか。信じるか信じないかはあなたし・・・いやいやいや!

都市伝説なんてレベルじゃないのがユダヤの祭り。「神はいる。なぜなら私たち(ユダヤ人)が生きているから。

(古代ロマンが気になる人はこちらのYouTube→https://youtu.be/SxShty5P6DY

ペサハの晩餐

そんな訳で、神がイスラエルの民をエジプトから解放した「どでかい奇跡」をペサハは記念しているのです。

親から子へ、子から孫へと語り継がれ、記憶を繋いできたこの祭りは、各家庭で行われます。祭り当日に商売しようなんて人はいません。祭りの時間までに店を閉め、仕事をやめてそそくさと家に帰ります。

街は静まり返り、耳をすませば各家庭の窓から楽しげな歌声や話し声と、漂ってくるごちそうの匂い。こんな時、イスラエルでは家族を中心に世界が回っている。と感じます。

ペサハの1日目の食事と7日目の食事は特別で、エジプト大脱出ストーリーを子供達に伝えるために特別な晩餐を行い、シナゴーグ(会堂)や西壁へ行く人もいます。

イスラエルのお土産でよく見かけるこの食器はペサハ用のもの。

イスラエル人たちと過ぎ越しの晩餐を過ごしましたが、家族で伝統を守る楽しそうな姿には感動しました。

伝統的なペサハの晩餐ではどんなに急いでもメインの食事にたどり着くまで1時間。(ごちそうだからと何も食べずに参加したらお腹ペコペコでしんどい)

photo by:https://images.app.goo.gl/zxRubqa5wbdL5g7L9

各家庭こだわりの式次第があり、それが絵本だったり、美しい装飾のついた格式高いものだったりと様々!

決まった食事や祈り、ペサハの歌や子供達の宝探しゲームなど、お父さんを囲んだ食卓で始まります。

ペサハの食事の大筋はユダヤ人家庭ならどこでも同じですが、それぞれの家庭の色で楽しんでお祝いをしているのが印象的。

photo by:https://images.app.goo.gl/PPCdU5pAMr2MvAaQA

ペサハの晩餐では過ぎ越しのストーリーを体験型で追えるようになっていて、例えば、エジプトでの苦役を思い出すために、苦い葉っぱを塩水につけて食べる…とか、10の災いの数だけお皿にワインの雫を垂らす…などのイベントがあるのです。

わたしが参加した家庭では、この「苦い葉っぱ」を食べるシーンで、離散していたユダヤ人ならではの「うちはセロリよ」とか、「ウチはパセリよ」などと議論が始まり「毎年決着がつかないんだ」と笑っていました。

時々順番を間違えたりもしながら(笑)和気藹々と賑やかに進みます。

こうして子どもたちは、味覚や行動で自分たちの歴史を体に刻んでいくのでしょう。

photo by:https://images.app.goo.gl/MRphMWtK2Kw6qfcT8

そうしてお腹が空いて気が遠くなる頃、ご馳走の登場です!

ユダヤのお父さん、お母さんは本当に料理上手で、どこの家庭もレストラン。

信じられないくらいのご馳走が食べきれないほど並び、デザートまでもしっかりあります。

普段宗教的でない人たちも、伝統と文化を守る。

イスラエルの民のアイデンティティが家族の絆を深める姿を見た気がしました。

ペサハの晩餐(セダー)をのぞいてみたい人は↓

観光はできる?

さて…友人に招いてもらえる…ということでもないと、ペサハの体験はなかなか難しいかもしれません。

特に、お店や公園の開く時間が変わったり、土曜日ではないのにシャバットのように街がストップしたりするので要注意。

ペサハの期間に被ったら、祭りのスケジュールをしっかり確認しましょう!

「日没から始まる」ことも忘れずに!

でもペサハの期間は長期休暇でもあるので、イベントも多くて街は賑やかです。

ペサハの過ごし方やグルメの記事はこちら

街中が仮装?!最もワクワクする祭り「プリム」ってなんだ?

2月-3月の辺りにやってくるイスラエルの春「アダルの月」は、その月に入っただけで喜びが増す!

一年で一番幸せな月!と言われるほどのお祭りです。

アーモンドの花が咲き始めるころ、通りの布屋さんに活気が出てくると「今年はなんの仮装をしよう?!」とワクワク。

聖書が起源の古い祭りですが、今ではハロウィンやコミケ、アニコンのような雰囲気もあってイベントも多く、外国人でも楽しむことができます。

何より、おじいちゃん、おばあちゃん、政治家や宗教家、ホームレス、老いも若きも街中が仮装しているってすごい!

日本では若者の文化であるコスプレですが、イスラエルはさながら国を挙げての「欽ちゃんの仮装大賞」状態。笑

思い思いに楽しめるので気張らずに参加できるのも嬉しい。(ディズニーの耳だけだっていい。)

プリムでは、”訳が分からなくなるまで酔いつぶれる”というしきたりもあるらしく。笑

祭りの二日目の朝は誰も起きてきません。笑

プリムイベントの開催時間の朝10時。

時間ぴったりに現地へ行ったら会場はまだオープンしておらず、「プリムだよ?まだ朝じゃない」と言われました。(えー。)

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とにかく飲んで歌って踊る!がプリムのようです。

あなたもとっておきのコスプレで、街に繰り出してみては?

私は毎年浴衣で参加しています。(←仮装ではない)

コスプレしてればみんな友達!と言わんばかりに大歓迎してくれますし、近年の日本の漫画・アニメブームも乗っかって、日本人にもなかなか楽しい祭りとなっています。

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プリムのお菓子「ハマンタッシェン」

photo by:ハマンタッシェンの作り方https://images.app.goo.gl/NE1hc328Q4cBkBxY6

プリムの伝統菓子、三角のクッキー「ハマンタッシェン」は、ハマンの耳と呼ばれて親しまれています。

「じゃあ、真ん中に入っているポピーシードやチョコレートは耳〇そなの?」と、聞いたら爆笑されました。

いや…耳食べるっっっ?!笑

(※ユダヤ人を絶滅させようとした「ハマン」と名前がかぶっているのは、後に訛ったからだそうで、もともとは耳のつもりではなかったらしいです。笑)

食べ応えは抜群で、ユダヤのお母さんの手作りは非常に美味しかったです。

イスラエルのガツンと強いカプチーノと合うんだよなぁ。

開催場所

2日間あるプリムの祭りはエルサレムなら、「ナハラオート」で街を貸し切っての大騒ぎをしていたり、バーやカフェでのオープンパーティーがあります♪

そして最近では、セントラルバスステーションの近くの「ビニヤニ ハウマ」でアニコンもやっていて、日本語が通じる学生も多く盛り上がっています。

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シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)では最初の晩に仮装して集まり、エステル記の朗読を聞きます。

そして、宿敵「ハマン」の名前が読まれる度、大人も子供も音の鳴るオモチャを搔き鳴らし、大ブーイングをして妨害!!

これがなかなか面白く、笑ってしまいます。

民族滅亡の危機を覚える時に、こんなに笑って過ごすなんてなんだか素敵。

なんのお祭り?

どのお祭りであれ、ユダヤ人に何のお祭りですか?と聞くと、決まって返ってくるのが、

「ユダヤの祭りは全部単純さ。誰かが我々を滅ぼそうとした。しかし成功しなかった。我々は生きている!さぁ飲もう!!ははははは」(真面目に聞いたのに。)

影のない豪快な笑い声と共に、ユダヤ人らしいお決まりのジョークです。

しかし真実をついてる。それくらい迫害を受けてきた民族なんです。

でも、それすら笑い飛ばして生きている喜びを楽しむ。

恨みや怒りではなく、喜びを継承する。イスラエルの魅力の一つだと思います。

プリムの物語

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「エステ」の語源がこの祭りに関係していると聞いたら驚くでしょうか?

プリムの美しき主人公、ユダヤ人にしてペルシャの女王となった「エステル」からきているんです。

ユダヤ人の悲劇「バビロン捕囚」を、歴史の授業で聞いたことがあるような気がするでしょう?…しない?笑

これはその頃、2500年ほど前のお話です。

当時のペルシャの王、アハシュエロス王の妃選びに招集された、国中の美しい女性たちの中から「エステル」は選ばれました。

(捕囚されたのって一般市民ではなく、王族や貴族など階級の高い人たちだったようです。)

国中から集められて選ばれるなんて、美しさどんだけ〜。

アハシュエロス王はエステルを愛します。

ところが、当時の総理大臣「ハマン」はあるユダヤ人が憎くてたまらず、民族ごと滅ぼしてやろうと密かに暗躍しユダヤ人虐殺計画を立て、王からその権限もまんまともらいます。

そしてついに、ユダヤ人抹殺の日がクジで決まりました。

ユダヤ暦、アダル月の13日。

ハマンが憎んだユダヤ人のモルデハイは、実はエステルの叔父。

ユダヤ人であることを伏せて妃となっていたエステルに、モルデハイは「あなたがここに来たのは、もしかするとこの時のためであるかもしれない。」

と王への進言を託します。

しかし、王の呼び出しなく王の庭へ入ると、男女問わず即打ち首。

しかもユダヤ人抹殺の日が定められた後、エステルがユダヤ人であることを明かすと言うことは、命がけのことでした。

一歩間違えば自分は死ぬ。そして同胞も皆死んでしまう…

しかし、エステルは断食の祈りを捧げ、同胞のために立ち上がったのです。

なんて勇気ある美しい女性!

この話が記されている「エステル記」は面白い上に、聖書の中でも短いからぜひ読んでみてください。

長くなるので色々端折りますが、その後ハマンは自分の作った処刑台で死ぬこととなり、アダル月の13日のユダヤ人暗殺計画は一変。

「ユダヤ人を殺そうとしたものは殺して良い。」とおふれが出た為、多くのペルシャ人が恐れ、ユダヤ人になりすましました。

この、「なりすました…」の部分が仮装と繋がっているとかいないとか。笑

この時、クジ(プル)で決まったユダヤ人抹殺の日が、一発大逆転の喜びの日、命の日に変わったことを神に感謝し喜びまくる。それがプリムのお祭りです。

お祭りの日はいつ?

ユダヤ暦で祝われるので、毎年2・3月のどこか…と日がズレますが、アダルの月の14・15日に祝われます。

プリムには思いっきり仮装して楽しみましょう♪

エルサレムがディズニーランドみたいになるので、仮装していない方が恥ずかしくなってきます。笑

ただし、エルサレムはまだ寒いので気をつけて!