2023.04.05

街中から小麦が消える?!「ペサハ」の祭り

「ペサハ」(過越しの祭り)

photo by:https://www.srugim.co.il/433440-רבנים-מתירים-להשתמש-בזום-בליל-הסדר

3-4月頃の7日間祝われる「ペサハ」では、街中のパンや小麦製品が消え、パッサパサの大判クラッカー「マッツァ」を主食に過ごします。

ペサハの前日までに家中を大掃除して、徹底的に小麦を家から出し、親の仇のごとく残ったパンを道端で焼いて燃やす光景も…

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なんでそこまで?!の、ペサハ(過ぎ越し)の物語を紹介します。

ペサハの物語

この話は、ユダヤ人のアイデンティティの根幹を成すもので、これを知らずには始められません。

他のお祭り(シムハットトーラーやスコット)も関係してくるので、知らない人は要チェック!

もしかしたら「モーセの十戒」の映画を見た人もいるかもしれません。

430年の間エジプトの奴隷だったイスラエルの民を救うため、神が選んだのがモーセさん。紅海を割って海を渡り、神の民として自由になったという「エジプト脱出」のストーリーです。

ちょっと突然のファンタジー?!ですが、イスラエルの神とユダヤ民族の関係って、日本の神信仰とは大きく異なっていて文化的にも非常に興味深いです。

映画「十戒」https://www.wikiwand.com/ja/十戒_(映画)

13世紀頃、エジプトの地ではユダヤ人たちが奴隷として苦役に苦しんでいました。

多産で多くなりすぎ、増え広がるユダヤの民を恐れたファラオは、生まれてきたユダヤ人の男子は全て殺すようにと命じます。(こわっ)

その頃に奴隷の子として生まれたのがユダヤ人モーセ。

しかし、母親はモーセを殺すことができず、(そりゃそうだ。)籠に入れてナイル川に流します。

それを拾ったのが、なんとファラオの妃!モーセはエジプトの宮殿でスクスク育ちます。

ファラオ https://www.wikiwand.com/ja/十戒_(映画)

一方、イスラエルの民への当たりが益々激しくなるファラオ。

奴隷たちの嘆きを聞いたイスラエルの神は、モーセの前に現れると、民をエジプトから救い出すようにと命じます。

モーセはファラオにユダヤ人を解放するようにと要求しますが、聞くわけないですねぇ。笑

そこで、イスラエルの神はエジプトに10の災いを起こし、徹底的にビビらせます。

エジプト VS イスラエルの神です。

ファラオは災いの9つまではビビりながらも、「奴隷解放なんてありえん!」と突っぱねますが、10番目の災いは…残酷なものでした。

「国中の長男が死ぬ。」これが10番目。

神が命じた”救いの条件”をその通り行ったユダヤの民の家は、10番目の災い(長男の死)を「過ぎ越す」ことができた・・・。これが過ぎ越しの祭りの起源です。

国中の長男が死んだ晩、エジプト全土で死者のいない家はなかったと記されています。ファラオの長男も然り…。

あまりのことにファラオの心は折れ、モーセとユダヤの民にその夜のうちにエジプトから出て行ってくれと言い渡します。

この時、ユダヤの民は追い出されるようにしてエジプトを出たので、旅に必要なパンを発酵させている暇がなく、種無しパン(マッツァ)と呼ばれる薄いパンを焼いて持って行きました。

日本人なら米を炊いてる暇がなくて、せんべい持ってきた感じでしょうか。(なんか違うけど・・・いいか)笑

ところが、我に返ったファラオは逃げたユダヤ人を戦車を率いて追いかけます。

逃げたユダヤの民の数は女と幼児を除いて60万人!!!!!!!

60万の労働力を手放すってかなりのことですもんねぇ…ピラミッドが建たない。笑

(というか、なんで憎き奴隷ごときの為に大打撃受けねばならんのじゃ!自由にしてなるものか!って感じでしょうか。)

怒りで狂ったエジプト軍がものすごい勢いで迫ってくる中、前に広がる海!絶体絶命!

その時、海の水が割れ、海底の地面が現れ、イスラエルの民は「歩いて」紅海を渡り、逃げ切ったのです。

奇跡のスケールでかすぎ。。。。

ファラオは怖じけずそのまま紅海を渡ろうとしますが、海の水は勢いよく元に戻り、エジプト軍は沈んでしまった…と。

現在紅海のとあるポイントにはエジプトの戦車が沈んでいる跡!?と言われるものもあるとか?ないとか。信じるか信じないかはあなたし・・・いやいやいや!

都市伝説なんてレベルじゃないのがユダヤの祭り。「神はいる。なぜなら私たち(ユダヤ人)が生きているから。

(古代ロマンが気になる人はこちらのYouTube→https://youtu.be/SxShty5P6DY

ペサハの晩餐

そんな訳で、神がイスラエルの民をエジプトから解放した「どでかい奇跡」をペサハは記念しているのです。

親から子へ、子から孫へと語り継がれ、記憶を繋いできたこの祭りは、各家庭で行われます。祭り当日に商売しようなんて人はいません。祭りの時間までに店を閉め、仕事をやめてそそくさと家に帰ります。

街は静まり返り、耳をすませば各家庭の窓から楽しげな歌声や話し声と、漂ってくるごちそうの匂い。こんな時、イスラエルでは家族を中心に世界が回っている。と感じます。

ペサハの1日目の食事と7日目の食事は特別で、エジプト大脱出ストーリーを子供達に伝えるために特別な晩餐を行い、シナゴーグ(会堂)や西壁へ行く人もいます。

イスラエルのお土産でよく見かけるこの食器はペサハ用のもの。

イスラエル人たちと過ぎ越しの晩餐を過ごしましたが、家族で伝統を守る楽しそうな姿には感動しました。

伝統的なペサハの晩餐ではどんなに急いでもメインの食事にたどり着くまで1時間。(ごちそうだからと何も食べずに参加したらお腹ペコペコでしんどい)

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各家庭こだわりの式次第があり、それが絵本だったり、美しい装飾のついた格式高いものだったりと様々!

決まった食事や祈り、ペサハの歌や子供達の宝探しゲームなど、お父さんを囲んだ食卓で始まります。

ペサハの食事の大筋はユダヤ人家庭ならどこでも同じですが、それぞれの家庭の色で楽しんでお祝いをしているのが印象的。

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ペサハの晩餐では過ぎ越しのストーリーを体験型で追えるようになっていて、例えば、エジプトでの苦役を思い出すために、苦い葉っぱを塩水につけて食べる…とか、10の災いの数だけお皿にワインの雫を垂らす…などのイベントがあるのです。

わたしが参加した家庭では、この「苦い葉っぱ」を食べるシーンで、離散していたユダヤ人ならではの「うちはセロリよ」とか、「ウチはパセリよ」などと議論が始まり「毎年決着がつかないんだ」と笑っていました。

時々順番を間違えたりもしながら(笑)和気藹々と賑やかに進みます。

こうして子どもたちは、味覚や行動で自分たちの歴史を体に刻んでいくのでしょう。

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そうしてお腹が空いて気が遠くなる頃、ご馳走の登場です!

ユダヤのお父さん、お母さんは本当に料理上手で、どこの家庭もレストラン。

信じられないくらいのご馳走が食べきれないほど並び、デザートまでもしっかりあります。

普段宗教的でない人たちも、伝統と文化を守る。

イスラエルの民のアイデンティティが家族の絆を深める姿を見た気がしました。

ペサハの晩餐(セダー)をのぞいてみたい人は↓

観光はできる?

さて…友人に招いてもらえる…ということでもないと、ペサハの体験はなかなか難しいかもしれません。

特に、お店や公園の開く時間が変わったり、土曜日ではないのにシャバットのように街がストップしたりするので要注意。

ペサハの期間に被ったら、祭りのスケジュールをしっかり確認しましょう!

「日没から始まる」ことも忘れずに!

でもペサハの期間は長期休暇でもあるので、イベントも多くて街は賑やかです。

ペサハの過ごし方やグルメの記事はこちら