「ペサハ」(過越しの祭り)

3-4月頃の7日間祝われる「ペサハ」では、街中のパンや小麦製品が消え、パッサパサの大判クラッカー「マッツァ」を主食に過ごします。
ペサハの前日までに家中を大掃除して、徹底的に小麦を家から出し、残ったパンを道端で焼いて燃やす光景も…
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なんでそこまで?!
のペサハ(過ぎ越し)の物語を紹介します。
ペサハの物語
この話は、ユダヤ人のアイデンティティの根幹を成すもので、これを知らずには始められません。
シムハットトーラーやスコットも関係してくるので、知らない人はチェック!
ペサハについては「モーセの十戒」の映画を見た人もいるかもしれませんが、紅海を割って海を渡り、エジプトで奴隷とされていたユダヤの民を解放した出エジプトのストーリーです。
ちょっと突然のファンタジーですが、知ると面白いのでぜひ。
イスラエルの神とイスラエル人たちと神の関係って、日本の神信仰とは大きく異なっていて文化的にも非常に興味深いです。
映画「十戒」https://www.wikiwand.com/ja/十戒_(映画)
13世紀頃、エジプトの地ではユダヤ人たちが奴隷として苦役に苦しんでいました。
多産で多くなりすぎ、増え広がるユダヤの民を恐れたファラオは、生まれてきたユダヤ人の男の子は全て殺すようにと命じます。
その頃に生まれたのがモーセ。
しかし、母親は殺すには惜しく、籠に入れてナイル川に流します。
それを拾ったのが、ファラオの妃!モーセはエジプトの宮殿で育てられます。
ファラオ https://www.wikiwand.com/ja/十戒_(映画)
奴隷たちの嘆きを聞いたイスラエルの神は大人になったモーセの前に現れると、民をエジプトから救い出すようにと命じます。
モーセはファラオにユダヤ人を解放するようにと要求しますが、聞くわけないですねぇ。笑
そこで、イスラエルの神はエジプトに10の災いを起こし、徹底的にビビらせます。
エジプト VS イスラエルの神です。
ファラオは災いの9つまではビビりながらも、「奴隷解放なんてありえん!」と突っぱねますが、10番目の災いは…残酷なものでした。
「国中の長男が死ぬ。」これが10番目。
イスラエル人たちは、神が語った”救いのしるし”を家の門につけたので、その災い(長男の死)はイスラエルの家を「過ぎ越し」ました。
これが過ぎ越しの祭りの起源です。
10番目の災いが起こった晩、エジプト全土で死者のいない家はなかったと記されています。ファラオの長男も然り…。
あまりのことにファラオは折れ、モーセとユダヤの民にその夜のうちにエジプトから出て行ってくれ!と言い渡します。
この時彼らは追い出されるようにしてエジプトを出たので、旅に必要なパンを発酵させている暇がなく、種無しパン(マッツァ)と呼ばれる薄いパンを焼いて持って行きました。
日本人なら米を炊いてる暇がなくて、ポン菓子持ってきた感じでしょうか。笑
ところが、我に返ったファラオは逃げたユダヤ人を戦車を率いて追いかけます。
なんといってもユダヤの民は女と幼児を除いて60万人。
60万の労働力を手放すってかなりのことですもんねぇ…ピラミッドが建たない。笑
後ろから追いかけてくるエジプト軍、前には紅海!
絶体絶命のその時、海の水が割れ、海底の地面が現れ、イスラエルの民は「歩いて」紅海を渡り逃げ切ったのです。
奇跡のスケールでかすぎ。
そしてファラオも続いて紅海を渡ろうとしたとき、海の水は元に戻り、エジプト軍は沈んでしまった…と。
現在紅海のとあるポイントにはエジプトの戦車が沈んでいる跡!?と言われるものもあるとか?
(古代ロマンが気になる人はこちらのYouTube→https://youtu.be/SxShty5P6DY)
ペサハの晩餐
この、神がイスラエルの民をエジプトから救った奇跡と、約束の地(今のイスラエルの地)へと導いたことをペサハは記念しているのです。
親から子へ、子から孫へと語り継がれ覚えられてきたこの祭りは、家庭内で行われます。
街は静まり返り、外に屋台が出たりなどの「お祭り感」はありません。
”イスラエルでは家庭を中心に世界が回っている。”そう感じるのはお祭りのあり方かも。
ペサハの1日目の食事と7日目の食事は特別!
このエジプト大脱出ストーリーを子供達に伝えるために特別な晩餐を行い、敬虔な家庭はシナゴーグへ集まります。
イスラエルでよく見かけるこの食器はペサハ用のもの。
イスラエル人たちに、何度かこの過ぎ越しの晩餐に招いてもらいましたが、家族で伝統を守る姿には感動しました。
メインの食事に行くまでのペサハのイベントがお父さんを囲んでテーブルで始まります。
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各家庭こだわりの式次第があり、それが絵本だったり、美しい装飾のついた格式高いものだったりと様々!
決まった食事や祈り、ペサハの歌や子供達の宝探しゲームなど、ペサハの食事の本筋は同じでも、それぞれの家庭で楽しんでお祝いをしているのが印象的。
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このペサハの晩餐では過ぎ越しのストーリーを体験型で追えるように決められていています。
例えば、エジプトでの苦役を思い出すために、苦い葉っぱを塩水につけて食べる…とか、10の災いの数だけお皿にワインの雫を垂らす…などがあるのです。
わたしが参加した家庭では、この「苦菜」を食べるシーンで、離散していたユダヤ人ならではの「うちはセロリよ」とか、「ウチはパセリよ」などと議論が始まり「毎年決着がつかないんだ」と笑っていました。
時々順番を間違えたりもしながら、和気藹々と賑やかに進みます。
子供達も味や、行動で自分たちの歴史を体に刻んでいくのでしょう。
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そうしてお腹が空いてたまらなくなった頃、ご馳走の登場です!
ユダヤのお父さん、お母さんは本当に料理上手で、どこの家庭もレストラン。
信じられないくらいのご馳走が食べきれないほど並び、デザートまでしっかりあります。
普段宗教的でない人たちも、伝統と文化を守る。
イスラエルの民のアイデンティティが家族の絆を深める姿を見た気がしました。
ペサハの晩餐(セダー)をのぞいてみたい人は↓
観光はできる?
さて…友人に招いてもらえる…ということでもないと、ペサハの体験はなかなか難しいかもしれません。
特に、お店や公園の開く時間が変わったり、土曜日ではないのにシャバットのように街がストップしたりするので要注意。
ペサハの期間に被ったら、祭りのスケジュールをしっかり確認しましょう!
「日没から始まる」ことも忘れずに!
でもペサハの期間は長期休暇でもあるので、イベントも多くて街は賑やかです。